会場の照明器具には、いつか寿命が来ます。ところが今までに作りためたショーデータは、そのままでは新しい器具で動きません。チャンネルの並びも、可動範囲も、色の作り方も器具ごとに違うからです。結果として、何年ぶんもの明かり作りが、器具の入れ替えと同時に捨てられ、一から作り直しになっています。
左が「今の状態」、下が「入れ替えた後」です。両方を同じ時間軸で走らせて、映像と数値の両方で突き合わせます。
旧器具の数値を新器具の数値へ直接置き換える表は作りません。器具が変わればチャンネル数も可動範囲も明るさの出方も変わるので、その表は1組の器具にしか使えないからです。いったん物理的な意味に戻してから、新しい器具の数値へ組み立て直します。
| 向き | 角度(度)で保存 — 8bit/16bit の違いも、可動範囲(540°/630°など)の違いも、ここで吸収されます |
|---|---|
| 明るさ | 0〜100 % で保存 — 明るさの出方(カーブ)の違いはここで吸収されます |
| ストロボ | 状態(開/閉)+ 毎秒の回数で保存 |
| 色 | 色度の座標で近似 — 色ガラス(離散)から色を混ぜる方式(連続)への変換は原理的に非可逆 |
| 模様(ゴボ) | スロット名+回転で対応づけ — 機械が候補を出し、最後は人が決める |
| ズーム・アイリス | ビーム角・開口 % で近似 — 可変範囲が違うと端で頭打ちになる |
「向きの数値が 32768 だった」は器具を替えた瞬間に意味を失いますが、「向きが +12.3 度」なら器具を替えても意味が残ります。単位を物理量に固定することが、この取り組み全体を支えています。
変換できたと言うだけでは足りません。目と数字の両方で確かめます。どちらか一方では、「なんとなく似ている」で終わってしまいます。
見た目だけでは、わずかなタイミングのずれや、端で頭打ちになった値を見落とします。旧と新を同じ時間軸で再生し、全チャンネルの数値を1コマずつ突き合わせた差分レポートを出します。
ここを最初に線引きしておかないと、レポートが読めるものになりません。変換結果は必ず3階層に色分けして出します。
向きの角度、明るさのパーセント、ストロボの回数、そして時間軸(切り替えかフェードか・フェード時間・シーンの長さ)。ここは数値で一致させます。崩れていたら、変換は失敗とみなしてやり直します。
あらかじめ合格ラインを決めておき、その範囲内かを自動で判定します。超えたものはレポートに黄色で出して、人が見られるようにします。
機械は候補を出すだけにします。決めた内容は対応表として残し、次の会場でも使えるようにします。
「自動で決めた / 近づけた / 人が決めた」が見分けられないレポートは、現場で事故のもとになります。だから3階層を必ず色分けします。
この取り組みは、ゼロから始める新規開発ではありません。7月末から進めてきた LightJockey の解析で、必要な部品がほぼ揃っています。そしてその解析自体が、AI を使って短期間で進んできたものです。
| どの器具が どこに居るか | 解読済み・確定。会場のパッチ設定を機械で読めます。向きの反転や入れ替えの設定まで読み取れます |
|---|---|
| 器具の チャンネル構成 | 機械で読める。器具プロファイルからチャンネル数と各チャンネルの名前を取り出せます |
| メーカー名 機種名・モード名 | 確定(2026-08-17)。プロファイル本体から正確に同定できます |
| ショーデータ の再生 | 実機と一致を実測済み。切り替えとフェードの区別まで、実機の出力と突き合わせて確認済みです |
| 照明への送出 | 完成。イーサネット経由で複数系統を送出できます |
| 「正解」の採取 | 完成。旧ソフト実機の出力をそのまま取り出して、突き合わせる仕組みがあります |
つまり「変換表の左辺」はすでに機械が読める状態にあります。「何チャンネル目が向きの上位バイトか」を人が資料から読み取る作業は、もう要りません。
新しい器具の仕様は業界標準の形式で公開されており、どのチャンネルが何の物理量に対応し、その範囲が何度から何度までかまで書かれています。これを読み込んで、変換表を自動生成します。人が機種ごとに表を手書きする作業がなくなります。
この取り組みで一番怖いのは変換漏れです。チャンネル番号を持つデータは演出データだけではなく、記憶させた明かり、登録した動き、器具の組分け、マクロなど多岐にわたります。まず「このライブラリの中でチャンネル番号を持つファイルを全部列挙し、変換したか否かを表にする」ところから始めます。表に「未対応」が1行でも残っている状態で「変換できました」とは言いません。
器具のモードを取り違えたまま最後まで走るのが、最悪の事故です。読み込んだチャンネル数が仕様と合わなければ、変換を続けずにエラーで停止する作りにします。この方針は、企画を立てる段階で実際に起きた取り違えから決めました。ある会場のパッチ一覧に表示される器具名と、プロファイル本体に書かれた実際の機種が食い違っていたのです。表示を信じて変換表を作れば、違う器具の表で変換していました。
旧と新の数値の時系列を突き合わせ、3階層に色分けしたレポートを自動生成します。人が確認すべき箇所だけが浮かび上がる形にします。
ここまでを手順として固め、コマンド1本で「変換 → 再生 → 比較 → レポート」まで通るようにします。次の会場は、同じ手順をなぞるだけになります。取扱説明書も合わせて用意します。
同じやり方で、LightJockey 本体の解析はここまで来ています。データ形式の解読、主要2系統で 1,458 件の自動テストがすべて合格、新しい操作画面を 58 画面まで実データで描画、210 画面ぶんのカタログ化。いずれも AI に手順を任せ、人は判断が要る箇所だけを見る形で進めてきた結果です。
器具の置き換え変換も、性質としては同じ「仕様を読み、機械的に変換し、実機と突き合わせて検算する」作業です。だから同じ進め方が使えると考えています。
既存のショーデータの中には、同じ機種が複数の会場で使われているものがあります。最初の1機種を通せば、そのまま横展開できます。
器具ごとのチャンネル構成を読み込み、物理的な量との対応をつけます。読み込んだ構成が食い違ったら、その場で止める作りにします。
先に旧ソフト実機の出力と一致することを確かめてから、比較の基準にします。
ここが最初の関門です。通らないと目視の比較そのものができないため、早い段階で実機で確かめます。
この取り組みの本体です。演出データだけでなく、記憶させた明かり・登録した動き・器具の組分けなど、チャンネル番号を持つデータをすべて洗い出して変換します。
3Dの映像を左右に並べた見比べと、数値の時系列を突き合わせた差分レポートの両方を出します。
ここまで来れば、次の会場は同じ手順をなぞるだけになります。
| (a) LightJockey を 使い続ける | 会場のライブラリ自体を新器具向けに書き換えます。今の操作方法をそのまま続けられます。ただし新機種のプロファイルを一から作る部分に未解決があり、まずは似た構成の既存プロファイルを雛形に改造する形で可否を測ります |
|---|---|
| (b) 新しい卓へ 移す | 会場の配置と器具の仕様を業界標準の形式で書き出し、新しい卓へ持っていきます。検証のためにどのみち必要な形式なので、こちらが先に立ち上がります。単体でも価値があります |
どちらを本線にするかは、ご意見をいただいてから決めます。両方という選択もあります。
これまで机上で立てていた計画に対し、実際に長く使われてきたショーデータの中から、最初の検証対象を選びました。十数年前に作られ、今も当時のまま残っている実データです。器具は6台という小規模な構成ですが、そこには1,800本を超える演出データが残っていました。
このデータを旧ソフトの実機に読み込ませ、画面に表示される「配置されている器具の台数」「使用しているDMXアドレスの数」と、こちらの解析結果を突き合わせたところ、1件の食い違いもなく一致しました。過去のデータを正しく読み取れていることを、実機そのものに確認してもらった形です。
同じタイミングで、grandMA(MA Lighting)系の3Dビジュアライザ側でも、この器具構成に合わせた確認用データがすでに用意されていました。こちらの解析作業を待たずに、確認の準備が両側から進み始めています。
「まだ決まっていないこと」のうち、試験会場の選定と3Dシミュレーター製品の選択は、この実データをきっかけに具体的な検討が進み始めています。企画段階であることに変わりはありません。次の段階は、この実データを使って実際に「見た目が変わらないこと」を確かめる作業です。
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