更新: 2026-08-31 19:54

器具リプレース支援 — 照明データの引き継ぎ

限定公開ページ / 企画段階 / 2026-08-17
照明器具を新しい機種に入れ替えても、これまで作りためたショーデータがそのまま使えるようにする取り組みです。
本当に同じ明かりが出ているかは、3Dのシミュレーターで旧器具と新器具を並べて見比べ、同時に数値でも突き合わせて確かめます。
このページは検索エンジンに登録しない設定です。URLを知っている人は閲覧できるため、お客様の実データや会場名・機密情報は掲載していません。

なぜやるのか

会場の照明器具には、いつか寿命が来ます。ところが今までに作りためたショーデータは、そのままでは新しい器具で動きません。チャンネルの並びも、可動範囲も、色の作り方も器具ごとに違うからです。結果として、何年ぶんもの明かり作りが、器具の入れ替えと同時に捨てられ、一から作り直しになっています。

この取り組みで変わること

データ引き継ぎの流れ

いまの会場データ ──► そのまま再生 ──► 3D シミュレーター(旧器具) ──┐ (器具は旧機種) │ 同じ絵か? │ ├─► 差分レポート └─► 器具の置き換え変換 ──► 新データ ──► 3D シミュレーター(新器具) ─┘ + 3D の録画で見比べ

左が「今の状態」、下が「入れ替えた後」です。両方を同じ時間軸で走らせて、映像と数値の両方で突き合わせます。

数値を置き換えるのではなく、「意味」に戻してから組み立て直す

旧器具の数値を新器具の数値へ直接置き換える表は作りません。器具が変わればチャンネル数も可動範囲も明るさの出方も変わるので、その表は1組の器具にしか使えないからです。いったん物理的な意味に戻してから、新しい器具の数値へ組み立て直します。

旧器具の数値 ──[旧器具の仕様で読み解く]──► 意味(何度・何パーセント・毎秒何回) ──[新器具の仕様で組み立てる]──► 新器具の数値
向き角度(度)で保存 — 8bit/16bit の違いも、可動範囲(540°/630°など)の違いも、ここで吸収されます
明るさ0〜100 % で保存 — 明るさの出方(カーブ)の違いはここで吸収されます
ストロボ状態(開/閉)+ 毎秒の回数で保存
色色度の座標で近似 — 色ガラス(離散)から色を混ぜる方式(連続)への変換は原理的に非可逆
模様(ゴボ)スロット名+回転で対応づけ — 機械が候補を出し、最後は人が決める
ズーム・アイリスビーム角・開口 % で近似 — 可変範囲が違うと端で頭打ちになる

「向きの数値が 32768 だった」は器具を替えた瞬間に意味を失いますが、「向きが +12.3 度」なら器具を替えても意味が残ります。単位を物理量に固定することが、この取り組み全体を支えています。

本当に同じかを、シミュレーターで確かめる

変換できたと言うだけでは足りません。目と数字の両方で確かめます。どちらか一方では、「なんとなく似ている」で終わってしまいます。

3D シミュレーターで並べて見比べる

どのシミュレーターを本命にするかは、実際にデータを受け取れることを実機で確かめてから決めます。ここが通らないと目視の比較そのものができないため、工程のいちばん最初に置いています。

同時に、数値の時系列で突き合わせる

見た目だけでは、わずかなタイミングのずれや、端で頭打ちになった値を見落とします。旧と新を同じ時間軸で再生し、全チャンネルの数値を1コマずつ突き合わせた差分レポートを出します。

何を保証し、何を保証しないか

ここを最初に線引きしておかないと、レポートが読めるものになりません。変換結果は必ず3階層に色分けして出します。

完全一致を保証 向き・明るさ・時間の流れ

向きの角度、明るさのパーセント、ストロボの回数、そして時間軸(切り替えかフェードか・フェード時間・シーンの長さ)。ここは数値で一致させます。崩れていたら、変換は失敗とみなしてやり直します。

許容差で保証 色・ズーム角・アイリス・フォーカス

あらかじめ合格ラインを決めておき、その範囲内かを自動で判定します。超えたものはレポートに黄色で出して、人が見られるようにします。

人が決める 模様(ゴボ)・プリズム・器具固有の効果

機械は候補を出すだけにします。決めた内容は対応表として残し、次の会場でも使えるようにします。

「自動で決めた / 近づけた / 人が決めた」が見分けられないレポートは、現場で事故のもとになります。だから3階層を必ず色分けします。

AI の技術で実現させる — なぜ今これができるのか

この取り組みは、ゼロから始める新規開発ではありません。7月末から進めてきた LightJockey の解析で、必要な部品がほぼ揃っています。そしてその解析自体が、AI を使って短期間で進んできたものです。

すでに手にある材料

どの器具が
どこに居るか
解読済み・確定。会場のパッチ設定を機械で読めます。向きの反転や入れ替えの設定まで読み取れます
器具の
チャンネル構成
機械で読める。器具プロファイルからチャンネル数と各チャンネルの名前を取り出せます
メーカー名
機種名・モード名
確定(2026-08-17)。プロファイル本体から正確に同定できます
ショーデータ
の再生
実機と一致を実測済み。切り替えとフェードの区別まで、実機の出力と突き合わせて確認済みです
照明への送出完成。イーサネット経由で複数系統を送出できます
「正解」の採取完成。旧ソフト実機の出力をそのまま取り出して、突き合わせる仕組みがあります

つまり「変換表の左辺」はすでに機械が読める状態にあります。「何チャンネル目が向きの上位バイトか」を人が資料から読み取る作業は、もう要りません。

AI が担当すること

1. 器具の仕様書を読んで、変換表を自動で組み立てる

新しい器具の仕様は業界標準の形式で公開されており、どのチャンネルが何の物理量に対応し、その範囲が何度から何度までかまで書かれています。これを読み込んで、変換表を自動生成します。人が機種ごとに表を手書きする作業がなくなります。

2. 変換漏れを、機械的に洗い出す

この取り組みで一番怖いのは変換漏れです。チャンネル番号を持つデータは演出データだけではなく、記憶させた明かり、登録した動き、器具の組分け、マクロなど多岐にわたります。まず「このライブラリの中でチャンネル番号を持つファイルを全部列挙し、変換したか否かを表にする」ところから始めます。表に「未対応」が1行でも残っている状態で「変換できました」とは言いません。

3. 食い違いを見つけたら、その場で止める

器具のモードを取り違えたまま最後まで走るのが、最悪の事故です。読み込んだチャンネル数が仕様と合わなければ、変換を続けずにエラーで停止する作りにします。この方針は、企画を立てる段階で実際に起きた取り違えから決めました。ある会場のパッチ一覧に表示される器具名と、プロファイル本体に書かれた実際の機種が食い違っていたのです。表示を信じて変換表を作れば、違う器具の表で変換していました。

4. 差分レポートを自動で書く

旧と新の数値の時系列を突き合わせ、3階層に色分けしたレポートを自動生成します。人が確認すべき箇所だけが浮かび上がる形にします。

5. 最終的に、指示ひとつで回る形にまとめる

ここまでを手順として固め、コマンド1本で「変換 → 再生 → 比較 → レポート」まで通るようにします。次の会場は、同じ手順をなぞるだけになります。取扱説明書も合わせて用意します。

この進め方の裏付け

同じやり方で、LightJockey 本体の解析はここまで来ています。データ形式の解読、主要2系統で 1,458 件の自動テストがすべて合格、新しい操作画面を 58 画面まで実データで描画、210 画面ぶんのカタログ化。いずれも AI に手順を任せ、人は判断が要る箇所だけを見る形で進めてきた結果です。

器具の置き換え変換も、性質としては同じ「仕様を読み、機械的に変換し、実機と突き合わせて検算する」作業です。だから同じ進め方が使えると考えています。

段取り

未着手
対象の会場と新しい器具を決め、器具の仕様データを集める

既存のショーデータの中には、同じ機種が複数の会場で使われているものがあります。最初の1機種を通せば、そのまま横展開できます。

未着手
器具の「意味」を扱う土台をつくる

器具ごとのチャンネル構成を読み込み、物理的な量との対応をつけます。読み込んだ構成が食い違ったら、その場で止める作りにします。

未着手
いまの会場データを再生し、旧器具のままの動きを記録する

先に旧ソフト実機の出力と一致することを確かめてから、比較の基準にします。

未着手
3D シミュレーターに映像を出す経路を確認する

ここが最初の関門です。通らないと目視の比較そのものができないため、早い段階で実機で確かめます。

未着手
新しい器具へ変換する

この取り組みの本体です。演出データだけでなく、記憶させた明かり・登録した動き・器具の組分けなど、チャンネル番号を持つデータをすべて洗い出して変換します。

未着手
旧と新を並べて確認し、差分レポートを出す

3Dの映像を左右に並べた見比べと、数値の時系列を突き合わせた差分レポートの両方を出します。

未着手
指示ひとつで回せる形にまとめ、手順書を用意する

ここまで来れば、次の会場は同じ手順をなぞるだけになります。

出力の形は2通りあります

(a) LightJockey を
使い続ける
会場のライブラリ自体を新器具向けに書き換えます。今の操作方法をそのまま続けられます。ただし新機種のプロファイルを一から作る部分に未解決があり、まずは似た構成の既存プロファイルを雛形に改造する形で可否を測ります
(b) 新しい卓へ
移す
会場の配置と器具の仕様を業界標準の形式で書き出し、新しい卓へ持っていきます。検証のためにどのみち必要な形式なので、こちらが先に立ち上がります。単体でも価値があります

どちらを本線にするかは、ご意見をいただいてから決めます。両方という選択もあります。

正直に書いておきます

  • この取り組みは企画をまとめた段階で、実装はこれからです。後継アプリ本体の開発とは触る部分が重ならないため、本体の進み具合には影響しません。
  • 色の変換は完全には元に戻せません。色ガラスを回して色を作る方式から、色を混ぜて作る方式への変換は原理的に非可逆です。合格ラインを決めて、許容差の中で自動判定します。
  • 灯体の正確な設置位置は、まだ自動では読み取れません。最初は等間隔の仮配置で見比べます。位置が要るのは客席から見た絵を厳密に比べたいときだけで、器具単体の動きの比較には影響しません。位置が読めるようになれば、配置データを差し替えるだけで同じ比較がそのまま実配置になります。
  • 明るさの数値が同じでも、光り方の見え方が器具の方式によって変わることがあります。数値は一致させたうえで、見え方の差は実際に見比べて別途補正する予定です。
  • 3D シミュレーターがデータを受け取れるかは、まだ実機で確かめていません。候補はありますが、確定にはしていません。

2026-08-19 続報 — 最初の実データで、確かめる作業を始めました

これまで机上で立てていた計画に対し、実際に長く使われてきたショーデータの中から、最初の検証対象を選びました。十数年前に作られ、今も当時のまま残っている実データです。器具は6台という小規模な構成ですが、そこには1,800本を超える演出データが残っていました。

このデータを旧ソフトの実機に読み込ませ、画面に表示される「配置されている器具の台数」「使用しているDMXアドレスの数」と、こちらの解析結果を突き合わせたところ、1件の食い違いもなく一致しました。過去のデータを正しく読み取れていることを、実機そのものに確認してもらった形です。

同じタイミングで、grandMA(MA Lighting)系の3Dビジュアライザ側でも、この器具構成に合わせた確認用データがすでに用意されていました。こちらの解析作業を待たずに、確認の準備が両側から進み始めています。

「まだ決まっていないこと」のうち、試験会場の選定と3Dシミュレーター製品の選択は、この実データをきっかけに具体的な検討が進み始めています。企画段階であることに変わりはありません。次の段階は、この実データを使って実際に「見た目が変わらないこと」を確かめる作業です。

まだ決まっていないこと(ご意見をいただきたい点)

ご意見・ご要望はフォームからお寄せください。件名に「LightJockey」と入れていただけると助かります。

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