Martin LightJockey 後継 / スタッフ限定 / 開発指針 / 2026-09-27

LjStudio/Visualizer 開発方向の指針

重要な順に 8 つのテーマを解析 —— 世界の動きと、私たちの判断の物差し

これから LjStudio と Visualizer の開発方向を決めるときに、スタッフ全員が同じ地図を見て話せるよう、 考えるべきテーマを重要な順に 8 つ並べ、それぞれについて 世界ではどうなっているか・いまの私たちはどこにいるか・どう判断するかをまとめました。 世界の動きは、AI を使って照明卓やビジュアライザを作っている事例の調査(2026-09-27・日本語と英語の Web 検索)に基づきます。

いちばん大事なこと
旧 LJ 2.7 と往復できることを守る世界に同じことをしている道具は見当たらない。ここが私たちの存在理由
世界の大きな流れ
器具とリグは GDTF/MVR で渡すさらに MVR をネットワークで共有する仕組み(MVR-xchange)が広がりつつある
AI の使われ方
AI が卓を「外から操作する」形が出てきた言葉や台本から Cue を作る道具が、公開ソフトで複数ある
3D 表示
写実は借りる、道具としての表示は作る光の見た目の競争には乗らない

00重要度の並びと、並べ方の理由

重要度は「そのテーマの判断が、ほかのテーマの判断をどれだけ縛るか」と「間違えたときに戻しにくいか」で決めました。上ほど先に、慎重に決めます。

T1

互換を守る線引き

すべての判断の前提。崩すと既存の現場とデータを失う

決定済み・維持
T2

器具とリグの受け渡し(GDTF/MVR)

データの形は後から変えにくい。3D・生成・他社連携の全部が乗る土台

方針決定済み
T3

AI が中から操作できること

T4 以降の AI 活用はすべてこの口を通る。すでに一部完成

次の一手の候補
T4

言葉・台本から演出を作る

世界で最も動きが速い領域。ただし T1 の枠の中でやる

判断待ち
T5

Visualizer —— 作るものと借りるもの

工数が最も膨らみやすい。境界を決めておかないと際限がない

一部決定・実測待ち
T6

座標で考える照明(位置・追尾)

T4 と T5 を結ぶ共通の考え方。実装は急がない

計画のみ
T7

動かす場所(Windows/Web)

世界は Web へ寄るが、私たちの現場の条件では優先度は低い

現状維持
T8

AI と一緒に作る開発体制

方向ではなく進め方。すでに実践中で、守り方を共有する

実践中

01判断の物差し(4 つ)

新しい機能や方向の提案が出たら、次の 4 つを上から順に当てます。上の物差しで引っかかったら、下で有利でも採りません。

1

LjStudio で保存したものは、旧 LJ 2.7 で開けるか

開けないものは LjStudio には入れない。入れたいなら複合路線(仮称 LjFusion)の仕事にする。

2

現場で、同じ元データから同じ光が同じタイミングで出るか

画面の上でうまく見えても、実機の DMX で確かめるまでは「できた」と言わない。

3

借りられるなら作らない

業界標準の形式や、無償で使える外部ソフトで足りる部分は自作しない。作るのは私たちにしか作れない部分だけ。

4

AI が操作でき、状態を読めるか

新しい機能は、人の手を介さず AI が動かして確かめられる形で作る。これが開発の速さを決める。

T1互換を守る線引き

重要な理由: ほかの 7 つのテーマはすべて「LjStudio に入れるのか、別の入れ物に入れるのか」を先に決めないと判断できない。

世界の動き

調べた範囲の公開ソフト(ASLS Studio・QLC+ など)や AI 系の道具は、どれも独自の形式か業界標準の形式で作られており、古い卓ソフトのデータとの往復を守っている道具は見当たらなかった。

いまの私たち

2026-09-07 に制作機を 2 系統に分けると決定済み。互換路線 LjStudio は「旧 LJ 2.7 で開いて再生できる」を最優先、複合路線(仮称 LjFusion)は GDTF+MVR で上限を外す別アプリ。

指針
  • この線引きは維持する。世界の事例を見ても、ここを守ることが私たちだけの価値になっている。
  • 魅力的な新機能でも、旧 LJ で開けない形になるなら LjStudio には入れず、複合路線に回す。

詳しくは「今後の開発方向 概論」。

T2器具とリグの受け渡し(GDTF/MVR)

重要な理由: データの形は後から変えるほど高くつく。3D 表示(T5)・演出の生成(T4)・他社の卓への引き渡しが、すべてこの形の上に乗る。

世界の動き
  • grandMA3・Vectorworks・Capture・Depence・WYSIWYG・BlenderDMX などが MVR の読み書きに対応。
  • さらに MVR-xchange(USB ではなくネットワークでリグのデータを共有・通知する仕組み)が grandMA3・Vectorworks 2026・BlenderDMX などに入り始めている。
  • AI で舞台を組む Web サービス(GDTF Stage Studio)も、GDTF の器具カタログと MVR の書き出しを前提にしている。
いまの私たち

2026-08-31 に「器具の型は今後 GDTF 前提」と決定。いまは位置と向きを MVR で渡せる段階で、器具の型(GDTF)は中身の伴わないものは作らない方針。

指針
  • 複合路線は GDTF+MVR を正にする(決定のとおり)。
  • MVR-xchange は、MVR の読み書きが完成したあとの次の候補として控えておく(いま着手はしない)。
  • LjStudio 側は、MVR の書き出しを「他社への窓」として育てる。旧 LJ の形式は変えない。

T3AI が中から操作できること

重要な理由: 言葉で演出を作る(T4)にも、開発を速く回す(T8)にも、AI がソフトを操作し状態を読める「口」が要る。口の形は一度決めると多くの道具が依存する。

世界の動き
  • MCP(AI エージェントが外部の道具を操作するための共通の接続規格)で照明を操る公開ソフトが出てきた。
    lights-pi: QLC+ を MCP 経由で AI が操作し、言葉からシーンを作る。
    lacylights-mcp: 劇場向け。器具の管理・シーン作成・Cue の並べ替えを MCP で AI に開放。
  • つまり世界では「AI にコードを書かせて卓を作る」より先に、「既存の卓を AI が操作できるようにする」形が広がっている。
いまの私たち

LjStudio は 2026-08-26 に「AI 操作可能化」を完了。命令ファイルでショーの開始・受信の切り替えなどができ、状態ファイルで現在の様子を読める。ただし命令の受け口は起動中のすべての LjStudio で共有しているので、複数起動時の取り違えに注意が要る。

指針
  • 既存の命令ファイルの口を、MCP で包むのが最も安く効果の大きい次の一手の候補。新しい口を別に作らない。
  • 本番機では AI の口を開けない/開けるなら読むだけ、という安全の線を先に決める。
  • 命令の宛先(どの LjStudio に届くか)を取り違えない仕組みを、MCP 化と同時に入れる。

T4言葉・台本から演出を作る

重要な理由: 世界で最も動きが速く、お客様の目にも見えやすい領域。ただし T1(互換)と T3(口)が決まってからでないと、作ったものの置き場所が決まらない。

世界の動き
  • SPOTLIGHT AI(真鍋大度率いる sonicPlanet と Tamatech Lab・2026 年 2 月発表): 「オーロラのように揺らめく光」のような言葉から、各器具の位置 (x, y, z) と色 (R, G, B) を時間の数式として AI が生成。数秒で 3D プレビューと実機(Art-Net・PosiStageNet・OSC)に同時に反映。照明デザイナーの代替ではなく「創作の加速」と位置づけ。
  • lacylights-mcp: 台本を読んで Cue を提案し、つなぎの時間まで整える。
  • GDTF Stage Studio: 生成 AI で舞台の見え方を作り、音楽に合わせたショーを自動で組む。
いまの私たち

デモ曲の照明 Cue の進行を自動生成した実績はある。言葉から演出を作る機能は、まだ持っていない。

指針
  • 作るなら、生成の結果は必ず普通の Cue/Sequence として保存し、旧 LJ で再生できる範囲に収める(LjStudio の場合)。生成専用の再生の仕組みは作らない。
  • 数式で動きを作る SPOTLIGHT AI の考え方は、上限を外す複合路線の方が素直に活かせる。
  • AI は「下書きを出す係」。採るかどうか・直すかは人が決める、という位置づけを守る。

判断待ち: 生成機能を LjStudio に入れるか、複合路線に置くか。T3 の MCP 化が済んだ時点で、小さな試作で比べてから決める。

T5Visualizer —— 作るものと借りるもの

重要な理由: 3D 表示は工数が際限なく膨らみやすい。どこまで自作するかの境界を決めておかないと、ほかのテーマの時間を食う。

世界の動き
  • 写実の水準は上がり続けている: Depence は物理ベースのレイトレースでビームを描き、ASLS Studio はブラウザの中で体積のあるビーム・フォグ・減衰まで描く。
  • 一方で、無償で借りられる 3D も増えた: grandMA3 onPC、BlenderDMX(Blender の追加機能。GDTF・MVR・MVR-xchange に対応)。
いまの私たち

LjStudio の Visualizer は内蔵の軽い 3D。器具をクリックで選ぶ・校正マーカー・ビームの届く範囲・光の点をつかんで動かすなど、仕込みの道具としての表示を伸ばしてきた。複合路線の 3D は grandMA3 onPC を借りる方針で、最初に実機で 3 件を測ってから決める。

指針
  • 写実の競争には乗らない。見た目のきれいさが要る場面は、MVR で外部の 3D に渡す。
  • 内蔵の Visualizer は「仕込みが速くなる道具」(選ぶ・狙う・校正する・届くか確かめる)に集中する。
  • 借りる先の候補に、grandMA3 onPC に加えて BlenderDMX を控えとして持つ(onPC の実測が通らなかったときの退路)。

T6座標で考える照明(位置・追尾)

重要な理由: 「チャンネルの値」ではなく「舞台のどこを照らすか」で考えると、言葉からの生成(T4)と 3D 表示(T5)と追尾が同じ土台に乗る。ただし実装を急ぐ理由は今はない。

世界の動き

SPOTLIGHT AI は演出を座標の数式で表し、器具の位置の共有に PosiStageNet を使う。grandMA3 も舞台座標で器具を狙う仕組みを持つ。

いまの私たち

Visualizer に校正マーカーと、光の点をつかんで複数台を向ける操作がある。ムービングを一斉に追尾させる構想は、本人判断で計画のみ(ソースは触らない)。

指針
  • 新しい機能を設計するときは、座標で表せる形にしておく(後で生成や追尾に繋げられるように)。
  • 追尾・PosiStageNet の受信は、本人の指示があるまで計画にとどめる。

T7動かす場所(Windows/Web)

重要な理由(低め): 世界の新しい道具はブラウザで動くものが多いが、私たちの現場の条件を変えるほどの理由にはならない。

世界の動き

ASLS Studio はブラウザでも、デスクトップアプリ(Electron)でも動く。LightGroove や GDTF Stage Studio は Web が前提。

いまの私たち

制作機は Windows、再生は旧 LJ 2.7 の実機と Linux 再生機 LjRun。配布と版の更新(VerUP)の仕組みが現場で回っている。

指針
  • 現状を維持する。現場で回っている配布の仕組みを崩す理由がない。
  • Web は「見る」「離れた所から少し触る」用途に限って検討する。

T8AI と一緒に作る開発体制

重要な理由(進め方): 何を作るかではなく、どう作るかの話。すでに実践しているので、守り方をスタッフで共有する。

世界の動き

「設計と相談は Claude、実装の実行は GitHub Copilot」のように、AI に役割を分けて任せる進め方の報告が増えている。一方で、照明卓や 3D ビジュアライザを丸ごと AI に書かせて作った、という公開記録は今回の調査では見つからなかった。

いまの私たち

AI(Claude)を司令塔に、作業を並行の担当に分けて進めている。ソフトを AI が止めて・作り直して・起動して・状態を読めるように作ってきた。

指針
  • AI が書いたものも、実機の DMX と本人が使っている場所で確かめるまでは完了にしない(物差し 2)。
  • AI が作る資料・画面には、会場名・お客様名を書かせない。公開の前に機械で調べる。
  • 丸ごと AI で作った前例は世界でもまだ少ない。私たちの進め方そのものが、他にない実例になりうるので、記録を残し続ける。

09決まっていること・判断を待つこと

決定すでに決まっていて、このページでも変えないこと

いつ決まったことテーマ
2026-08-26LjStudio の AI 操作可能化(命令ファイル・状態ファイル)T3
2026-08-31器具の型は今後 GDTF 前提。中身の伴わない GDTF は作らないT2
2026-09-07制作機を 2 系統に分ける(互換路線 LjStudio/複合路線 仮称 LjFusion)。複合路線の 3D は grandMA3 onPC を借りる(実測 3 件が条件)T1・T5
2026-09-25ムービングの一斉追尾は計画のみ。ソースは触らないT6

未決このページで新しく挙げる、判断を待つこと

A

LjStudio の命令ファイルの口を MCP で包むか

T3。本番機での扱い(開けない/読むだけ)と、宛先を取り違えない仕組みを同時に決める。

B

言葉から演出を作る機能を、どちらの系統に置くか

T4。A が済んだあと、小さな試作で比べる。

C

借りる 3D の控えに BlenderDMX を加えるか

T5。grandMA3 onPC の実測 3 件の結果を見てから。

D

MVR-xchange に対応するか・いつか

T2。MVR の読み書きが完成した後に判断。

判断の順番は A → B → C・D。日付の約束はしません。

10参考: 世界の事例一覧

2026-09-27 の調査で見つけたもの。各社・各プロジェクトの公開情報に基づきます。

名前何をするものかAI の使い方関係するテーマ
SPOTLIGHT AI言葉から照明演出を生成し、3D プレビューと実機へ同時に出す言葉 → 位置と色の時間の数式T4・T6
lacylights-mcp劇場向けの照明の設計と操作MCP で AI に開放・台本から Cue を提案T3・T4
lights-piQLC+ を使う小型の照明制御MCP・言葉からシーンを作るT3
GDTF Stage StudioWeb で舞台を組み、MVR を書き出す生成 AI で見え方・音楽に合わせたショーT2・T4
ASLS Studioブラウザで動く卓+3D ビジュアライザ(オープンソース)言及なしT5・T7
BlenderDMXBlender で動く 3D ビジュアライザ(GDTF・MVR・MVR-xchange)言及なしT2・T5
Depence写実的なビジュアライザ(レイトレースのビーム)言及なしT5
QLC+定番のオープンソース照明卓lights-pi などが外から AI で操作T3

調査の限界: 公開されている Web の範囲に限ります。非公開のフォーラムや社内の資料、展示会での口頭の情報は含みません。

11用語

用語意味
GDTF照明器具の「型」(チャンネルの並び・可動範囲・形)を書く業界標準の形式
MVR器具の配置(位置・向き・アドレス)を GDTF とともに受け渡す形式
MVR-xchangeMVR のファイルを、USB ではなくネットワークで共有し、更新を知らせ合う仕組み
MCPModel Context Protocol。AI エージェントが外部のソフトを操作するための共通の接続規格
Art-NetDMX の信号を LAN で運ぶ規格
PosiStageNet舞台上の位置(人や物の座標)をネットワークで共有する規格
OSC音響・映像・照明の機器の間で値をやり取りする軽い通信規格
互換路線/複合路線旧 LJ 2.7 との往復を守る LjStudio と、GDTF+MVR で上限を外す別アプリ(仮称 LjFusion)

12出典