照明制御の規格をやさしく解説
位相制御 / 0-10V / DALI / DMX512 / Art-Net / PWM

照明制御45年 | それぞれ何のための方式で、何が得意で、何ができないのか

先に結論

調光の方式が何種類もあるのは、時代ごとに必要なものが変わったからです。そして古い方式も現場に残り続けます。

どれが一番優れている、という話ではありません。建物の管理に向くもの、演出に向くもの、深い調光に向くものが、それぞれ別です。

実際の現場では複数の方式が混在します。だから「つなぐ(変換する)」技術が要ります。

ひと目で比べる

方式登場時期明るさの刻み器具の個別制御向いている用途
位相制御(2線式)白熱電球の時代から連続(アナログ)できない(回路単位)白熱電球の調光。既設の一般照明
0-10V(1-10V)古くからのアナログ方式連続(アナログ)できない(回路単位)設備側の調光ユニット。既設改修
DALIデジタル世代(建物設備向け)254段階(対数)できる(1台ずつ番号)ビル・施設の照明管理
DMX512舞台・演出の標準256段階(8bit)/16bitは2ch使用できる(チャンネル単位)舞台・演出・ライブのリアルタイム制御
Art-NetDMXをLANに載せた世代DMXと同じDMXと同じ多系統・長距離・PC/タブレット連携
PWM(DC直接駆動)LED時代コントローラ次第(当方は 32768 段階=15ビット)回路ごとLEDの深い調光。滑らかな消え際

それぞれの中身

位相制御(2線式調光)

白熱電球の時代から使われてきた、いちばん身近な調光

交流の波形を途中から流し始めることで、電球に届く電力を減らします。壁の調光つまみを回すと暗くなる、あの方式です。電源線 2 本だけで済むので工事が簡単で、安く、長く使われてきました。

得意なこと

白熱電球なら深く自然に絞れる。配線は電源線だけ。安価で普及している。

苦手なこと

LEDでは深く絞るとちらつく。電源の乱れをそのまま受ける。器具ごとの制御はできない。

ノイズの話

波形を途中から急に流すため高周波のノイズが出ます。調光器にはそれを抑えるコイルが入っており、昔は AM ラジオへの障害が問題になりました。今は無線機器のデジタル化が進み、以前ほどではありません。

0-10V(1-10V)調光

昔はこれしか無かった。だから今も残っている

電源とは別に制御線を 2 本引き、その電圧(0〜10V)で明るさを指示します。電圧が高いほど明るい、という単純な仕組みです。方式としては古いのですが、昔はこれで全部やるしかありませんでした。仕組みが単純で壊れにくく、導入数も多かったため、いまも設備として生きている建物がたくさんあります。

得意なこと

仕組みが単純で分かりやすい。設備側の調光ユニットとして広く普及。既設が生きている。

苦手なこと

制御線が別途必要。器具ごとの個別制御はできない。長距離では電圧降下の影響を受ける。

現場での立ち位置

改修案件で「盤は 0-10V のまま、演出側は新しい方式で」という混在が普通に起きます。変換してつなぐ場面が多い方式です。

DALI

建物設備側で普及したデジタル調光

器具 1 台ごとに番号(アドレス)を振り、デジタル信号で「何番を何%に」と指示します。器具側から状態を返すこともできる双方向の方式で、ビルや施設の照明管理に向いています。

得意なこと

器具1台ごとの個別制御。グループ・シーンの管理。状態の確認。設備側での普及度が高い。

できないこと

細かいフェード制御ができません。フェード時間は指定できますが、明るさの刻みが規格上 254 段階(対数カーブ)しかなく、深く絞った領域を滑らかに落とすには段階が足りません。

現場での立ち位置

一般照明の管理は DALI、演出や深い調光が要る器具は別方式、という切り分けが現実的です。当方は DALI への変換に既製のゲートウェイ製品を使い、その前後の制御を設計します。

DMX512

舞台・演出照明の共通言語

1 本の線に 512 個の「明るさの値」を順番に並べて、毎秒数十回くり返し送り続けます。調光卓のフェーダーを動かせば、その動きがそのまま器具に伝わります。ムービングライトの首振りや色も、この値で動きます。

得意なこと

リアルタイム性。演出機器の共通言語で、機材の組み合わせが自由。フェードは卓側で自在。

苦手なこと

1チャンネルは 256 段階。細かくするには 2 チャンネル使って 16 ビットにします。一方通行なので器具の状態は返りません。

現場での立ち位置

舞台・ライブ・イベントの標準。建物設備側の DALI や 0-10V と混在する現場では、変換してつなぎます。

Art-Net

DMX を LAN(イーサネット)に載せる

DMX の信号を、パソコンのネットワークと同じ線に流す方式です。1 本の LAN ケーブルで多系統を運べるので、規模が大きい現場や、距離が長い現場、PC・タブレットから制御したい現場で使われます。

得意なこと

多系統をまとめて運べる。長距離。既存の LAN 設備が使える。PC やソフトとの連携。

苦手なこと

ネットワーク機器の設定と管理が必要。他の通信と混ぜると影響を受けることがあります。

現場での立ち位置

大規模施設・常設演出で定番。末端では Art-Net → DMX512 に戻して器具に配ります。

PWM(DC24V などの直接駆動)

LED 時代の本命。深い調光はここでしか出せない

LED を高速でオン・オフし、その「点いている時間の割合」で明るさを決めます。点滅の速さはちらつきが見えない 2〜4kHz を使います。刻みの細かさはコントローラの設計しだいで、当方は最小 1/4096 の細さから立ち上げ、出力の分解能は 15 ビット(32768 段階)を持たせています。

12 ビット(4096 段階)ではなく 15 ビットにしている理由は消え際です。12 ビットのままだと最後の一段から 0 へ落ちるときにパッと消えてしまいます。15 ビットは 3 ビット分細かい、つまりその最後の一段をさらに 8 分割できるので、最後まで滑らかに消し切れます(理想は 16 分割=16 ビット)。

得意なこと

深い調光(常夜灯レベル)。滑らかな消え際。器具ごとに調光カーブを作り込める。

苦手なこと

直流電源と専用の配線設計が必要。器具側に制御部が要る。既製品では細かい作り込みができないことが多い。

現場での立ち位置

LEDシャンデリアなど、絞ったときの美しさが求められる器具。当方の主力方式で、1万灯以上の実績があります。

現場では混ざります

ここまで別々に説明しましたが、実際の建物ではこれらが同時に存在します。20 年前の 0-10V の盤が生きていて、その隣に DALI の器具が入り、演出側は DMX512 で組まれている。そういう現場が普通にあります。

古い機材が残っているのは悪いことではありません。動いているものを無理に捨てる必要はなく、足りない部分だけを新しくして、間を変換でつなぐのが現実的です。

混在で気をつけること
・同じ調光回路に器具が混ざると、LED化したときにバラバラに消えます(明るさの出方が製品ごとに違うため)
・位相制御の系統はノイズと電源の乱れを持ち込みます。演出系と同じ電源に載せると影響が出ることがあります
・大きな劇場ではキュービクルの段階で一般照明と舞台照明の系統を分けます。分けていない建物では、その差がトラブルになります

方式をまたいでつなぐ具体的な組み合わせと実績は、照明制御の方式変換・特殊制御にまとめています。

よくある質問

調光の方式はなぜ何種類もあるのですか?
時代ごとに必要とされるものが変わり、そのたびに新しい方式が生まれたためです。白熱電球の時代は位相制御だけで足りました。器具を個別に制御したい、遠くまで送りたい、演出に使いたい、という要求が出るたびに方式が増え、古いものも残り続けています。
DALI と DMX512 は何が違うのですか?
DALI は建物設備向けで、器具1台ごとに番号を振って個別に指示する双方向のデジタル方式です。DMX512 は舞台・演出向けで、512個の明るさの値を毎秒数十回、一方通行で送り続けます。DALI は管理に向き、DMX512 はリアルタイムの演出に向きます。
DALI では細かいフェードができないのですか?
フェード時間の指定はできますが、明るさの刻みが規格上 254 段階(対数カーブ)しかありません。深く絞った領域で滑らかに落とすには段階が足りず、当方が LED シャンデリアで行っている 4096 段階以上のフェードは DALI 単体では実現できません。
0-10V は古い方式なのに、なぜ今も使われているのですか?
昔はこれしか選択肢がなく、大量に導入されたためです。仕組みが単純で壊れにくく、既存設備がそのまま生きているケースが多くあります。改修では新旧が混在するのが普通です。
位相制御の調光器はノイズが出ると聞きました。本当ですか?
本当です。交流波形を途中から急に流し始めるため、その切り替わりで高周波のノイズが発生します。調光器にはノイズを抑えるコイルが入っており、昔は AM ラジオへの障害が問題になりました。現在は無線機器のデジタル化が進み、以前ほど問題になることは減っています。
「うちの設備はどの方式なのか」から相談できます。
既設の盤・器具・やりたいことを教えていただければ、方式の判別と現実的な進め方をお答えします。
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