照明制御45年 | それぞれ何のための方式で、何が得意で、何ができないのか
調光の方式が何種類もあるのは、時代ごとに必要なものが変わったからです。そして古い方式も現場に残り続けます。
どれが一番優れている、という話ではありません。建物の管理に向くもの、演出に向くもの、深い調光に向くものが、それぞれ別です。
実際の現場では複数の方式が混在します。だから「つなぐ(変換する)」技術が要ります。
| 方式 | 登場時期 | 明るさの刻み | 器具の個別制御 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| 位相制御(2線式) | 白熱電球の時代から | 連続(アナログ) | できない(回路単位) | 白熱電球の調光。既設の一般照明 |
| 0-10V(1-10V) | 古くからのアナログ方式 | 連続(アナログ) | できない(回路単位) | 設備側の調光ユニット。既設改修 |
| DALI | デジタル世代(建物設備向け) | 254段階(対数) | できる(1台ずつ番号) | ビル・施設の照明管理 |
| DMX512 | 舞台・演出の標準 | 256段階(8bit)/16bitは2ch使用 | できる(チャンネル単位) | 舞台・演出・ライブのリアルタイム制御 |
| Art-Net | DMXをLANに載せた世代 | DMXと同じ | DMXと同じ | 多系統・長距離・PC/タブレット連携 |
| PWM(DC直接駆動) | LED時代 | コントローラ次第(当方は 32768 段階=15ビット) | 回路ごと | LEDの深い調光。滑らかな消え際 |
白熱電球の時代から使われてきた、いちばん身近な調光
交流の波形を途中から流し始めることで、電球に届く電力を減らします。壁の調光つまみを回すと暗くなる、あの方式です。電源線 2 本だけで済むので工事が簡単で、安く、長く使われてきました。
白熱電球なら深く自然に絞れる。配線は電源線だけ。安価で普及している。
LEDでは深く絞るとちらつく。電源の乱れをそのまま受ける。器具ごとの制御はできない。
波形を途中から急に流すため高周波のノイズが出ます。調光器にはそれを抑えるコイルが入っており、昔は AM ラジオへの障害が問題になりました。今は無線機器のデジタル化が進み、以前ほどではありません。
昔はこれしか無かった。だから今も残っている
電源とは別に制御線を 2 本引き、その電圧(0〜10V)で明るさを指示します。電圧が高いほど明るい、という単純な仕組みです。方式としては古いのですが、昔はこれで全部やるしかありませんでした。仕組みが単純で壊れにくく、導入数も多かったため、いまも設備として生きている建物がたくさんあります。
仕組みが単純で分かりやすい。設備側の調光ユニットとして広く普及。既設が生きている。
制御線が別途必要。器具ごとの個別制御はできない。長距離では電圧降下の影響を受ける。
改修案件で「盤は 0-10V のまま、演出側は新しい方式で」という混在が普通に起きます。変換してつなぐ場面が多い方式です。
建物設備側で普及したデジタル調光
器具 1 台ごとに番号(アドレス)を振り、デジタル信号で「何番を何%に」と指示します。器具側から状態を返すこともできる双方向の方式で、ビルや施設の照明管理に向いています。
器具1台ごとの個別制御。グループ・シーンの管理。状態の確認。設備側での普及度が高い。
細かいフェード制御ができません。フェード時間は指定できますが、明るさの刻みが規格上 254 段階(対数カーブ)しかなく、深く絞った領域を滑らかに落とすには段階が足りません。
一般照明の管理は DALI、演出や深い調光が要る器具は別方式、という切り分けが現実的です。当方は DALI への変換に既製のゲートウェイ製品を使い、その前後の制御を設計します。
舞台・演出照明の共通言語
1 本の線に 512 個の「明るさの値」を順番に並べて、毎秒数十回くり返し送り続けます。調光卓のフェーダーを動かせば、その動きがそのまま器具に伝わります。ムービングライトの首振りや色も、この値で動きます。
リアルタイム性。演出機器の共通言語で、機材の組み合わせが自由。フェードは卓側で自在。
1チャンネルは 256 段階。細かくするには 2 チャンネル使って 16 ビットにします。一方通行なので器具の状態は返りません。
舞台・ライブ・イベントの標準。建物設備側の DALI や 0-10V と混在する現場では、変換してつなぎます。
DMX を LAN(イーサネット)に載せる
DMX の信号を、パソコンのネットワークと同じ線に流す方式です。1 本の LAN ケーブルで多系統を運べるので、規模が大きい現場や、距離が長い現場、PC・タブレットから制御したい現場で使われます。
多系統をまとめて運べる。長距離。既存の LAN 設備が使える。PC やソフトとの連携。
ネットワーク機器の設定と管理が必要。他の通信と混ぜると影響を受けることがあります。
大規模施設・常設演出で定番。末端では Art-Net → DMX512 に戻して器具に配ります。
LED 時代の本命。深い調光はここでしか出せない
LED を高速でオン・オフし、その「点いている時間の割合」で明るさを決めます。点滅の速さはちらつきが見えない 2〜4kHz を使います。刻みの細かさはコントローラの設計しだいで、当方は最小 1/4096 の細さから立ち上げ、出力の分解能は 15 ビット(32768 段階)を持たせています。
12 ビット(4096 段階)ではなく 15 ビットにしている理由は消え際です。12 ビットのままだと最後の一段から 0 へ落ちるときにパッと消えてしまいます。15 ビットは 3 ビット分細かい、つまりその最後の一段をさらに 8 分割できるので、最後まで滑らかに消し切れます(理想は 16 分割=16 ビット)。
深い調光(常夜灯レベル)。滑らかな消え際。器具ごとに調光カーブを作り込める。
直流電源と専用の配線設計が必要。器具側に制御部が要る。既製品では細かい作り込みができないことが多い。
LEDシャンデリアなど、絞ったときの美しさが求められる器具。当方の主力方式で、1万灯以上の実績があります。
ここまで別々に説明しましたが、実際の建物ではこれらが同時に存在します。20 年前の 0-10V の盤が生きていて、その隣に DALI の器具が入り、演出側は DMX512 で組まれている。そういう現場が普通にあります。
古い機材が残っているのは悪いことではありません。動いているものを無理に捨てる必要はなく、足りない部分だけを新しくして、間を変換でつなぐのが現実的です。
方式をまたいでつなぐ具体的な組み合わせと実績は、照明制御の方式変換・特殊制御にまとめています。