LED照明がちらつく・暗くできない — 調光トラブルの原因と直し方

照明制御45年(DMX512 / Art-Net)| LEDシャンデリア 1万灯以上の実績にもとづく解説

先に結論

既設の 2線式(位相制御)調光器のまま照明をLEDに替えると、深く絞ったときにちらつきます。これは製品の善し悪しではなく方式による原理的なものです。

「調光対応」と書かれたLED電球でも、現場の電源では安定するとは限りません。試験室のきれいな電源での確認は現場の証明になりません。

確実に直すには、位相制御をやめて DC24V + 高周波PWM調光に替えます。既設の電線はそのまま使えることがほとんどです。

症状から探す

こんな症状何が起きているか対処の方向
絞るとチカチカする
常夜灯まで落とせない
位相制御は「交流波形のどこで点けるか」で明るさを決めます。電源波形が乱れると点けるタイミングがばらつき、深く絞った領域ではそれが大きな明滅になります。 方式を替える(DC24V + PWM)
ある明るさより下で
急に消える
LEDは白熱電球と違って立ち上がりが早く、わずかな電圧で一気に点きます。段階が粗いと下限で階段状になり、消え際が破綻します。 調光カーブの作り込み(256段階→4096段階)
器具ごとにバラバラに消える
間接照明が先に消える
LEDは製品ごとに明るさの出方(調光カーブ)が違います。白熱電球はどれもフィラメントで特性が揃っていましたが、LEDは揃いません。 器具側でカーブを周囲に合わせ込む
消えるときに「カチッ」と
不自然に切れる
白熱電球はフィラメントが冷めるまでふわっと残ります。LEDは瞬時に消えるため、舞台や式場では違和感になります。 立ち上がりと立ち下がりで別のカーブ・遅延を持たせる
「調光対応」なのに
うまくいかない
調光が可能であることと、乱れた現場電源のもとで0.1%まで安定して動くことは別です。 下の「調光対応の表示について」を参照

なぜ位相制御では安定しないのか

位相制御は、交流の波形が0を横切るタイミング(ゼロクロス)を基準にして、「波形のどこで点弧するか」で明るさを決めます。つまり電源波形そのものが基準です。

ところが現場の電源は揺れます。エレベーターが起動すれば電圧は動きますし、三相4線式で動力と照明が同居していれば動力の影響をまともに受けます。最近の高圧キュービクルは電子機器だらけで、電源波形は昔よりむしろ乱れています。

深く絞った状態では、電気を流している時間はごくわずかです。そこにタイミングのばらつきが乗ると、わずかな出力に対して相対的に巨大な変動になります。全光なら誰も気づかない揺らぎが、0.1%の常夜灯では盛大なちらつきになる。これが原理です。

大きな劇場では、キュービクルの段階で一般照明と舞台照明の系統を分けます。 ホテルの宴会場などではそこまで作り込まないことが多く、その差がトラブルになります。 単体の検査室でいくら安定していても、現場では他の電源の影響を受けます。

「調光対応」の表示について

「調光対応」と書かれた安いLED電球を買ってきて「大丈夫でした」という声は、いまだにあります。たしかに調光は可能でしょう。しかし可能であることと、乱れた現場電源のもとで深く絞っても安定して点り続けることは、まったく別の話です。

表示は「その条件なら動く」ことを示しているだけで、あなたの現場の電源で安定する保証ではありません。判断が難しいときは、実際に一番暗くしたい状態まで絞って確認してください。全光では違いが出ません。

⚠ ちらつきだけでは済みません — 調光回路にLED球を入れたときの危険

ここまでは「見え方」の話でした。しかし既設の調光回路にLED電球を入れると、機器の故障・発熱・焼損につながることがあります。ちらつきは、その前ぶれとして出ていることがあります。

根本の原因はひとつです。既設の調光器は白熱電球を前提に作られているということ。白熱電球は「電気を流せば流しただけ熱くなって光る」素直な負荷(抵抗負荷)ですが、LED電球は中に電源回路とコンデンサが入った、まったく性質の違う負荷です。

最も危険なのは、100Vの位相制御(2線式)調光回路に「調光不可(非調光形)」のLED電球を付けてしまうことです。 これはトラブルではなく、メーカーが取扱説明書で明確に禁止している使い方です。 白熱電球からの交換時にいちばん起きやすく、そして最も危険な間違いなので、先にこちらから説明します。

0. 【最重要】調光回路に「調光不可」のLED球を付ける発煙・発火

市販のLED電球の大半は「非調光形(調光器では使えません)」です。調光対応品は種類が少なく、価格も高めです。白熱電球が切れたので同じ口金のLED電球を買ってきて付けた——その回路が調光回路だった、というのが典型的な事故の入り口です。

非調光形のLED電球の中身は、交流を整流してコンデンサで平滑し、定電流回路でLEDを光らせる、というシンプルな構成です。入力が正弦波であることを前提に設計されています。

そこへ位相制御で途中を切り取られた波形が入ると、内部の定電流回路は「電圧が足りない」と判断して、残っているわずかな期間に無理やり電流を取り込もうとします。結果、部品の定格を超える電流が繰り返し流れ、ドライバICと電解コンデンサが発熱します。

電解コンデンサの寿命は、温度が10℃上がるごとにおよそ半分になります。 カタログ4万時間の製品が数千時間、条件によっては数百時間で壊れます。 しかも壊れ方が穏やかではありません。異臭・発煙、樹脂部の変形や焦げに至った事例が国内でも報告されています。 口金付近が変色していたら、すでにかなり進んだ状態です。

さらに、この状態では可聴域の「ジー」「ブーン」という唸りが出ます。LED球内部の部品が位相制御の急峻な立ち上がりで機械的に振動するためです。調光器側から鳴っていることもあります。音が出ている=異常なストレスがかかっていると考えてください。

0-2. 「つまみを最大にしておけば大丈夫」は誤りです重大

よくある誤解です。理由は3つあります。

  1. 最大でも完全な正弦波は通っていません。位相制御はトライアックを点弧させる方式上、全開でも波形の頭がわずかに欠けます。切り刻まれた波形であることに変わりはありません。
  2. 調光器のノイズ対策部品を通っています。全開でもチョークコイルやスナバ回路の影響を受けます。
  3. 誰かがつまみに触れば、その瞬間に危険な領域に入ります。清掃業者、アルバイト、次の入居者。運用ルールで安全を担保することはできません。

メーカーの禁止事項は「調光器回路に接続しないこと」であって、「絞らなければよい」ではありません。調光回路に非調光形をつないだ時点で、保証の対象外にもなります。

0-3. 見分け方と、交換前の確認

確認するもの見かた該当したら
LED電球のパッケージ・本体表示 「調光器対応」「調光可」の記載が無ければ、非調光形です。「調光器では使用できません」と明記されているものも多くあります。小さく書かれているので見落としやすい箇所です。 調光回路には使わない
壁のスイッチ スライド式・回転式のつまみ、明るさが連続的に変わるスイッチは調光器です。ON/OFFだけに見えても、内部が調光器の場合があります。 調光対応品を選ぶ
もとの電球 白熱電球・ミニクリプトン球が付いていた器具は、調光回路の可能性が高くなります。 回路を確認する
交換後の症状 唸り音・ちらつき・異臭・口金の変色。いずれか一つでも出たら適合していません。 ただちに使用を中止
「少しちらつくが点いているから大丈夫」で使い続けないでください。 非調光形にとって、この状態は設計範囲外の連続運転です。時間の問題で壊れます。 壊れ方が発煙・焦げになり得るのが、白熱電球との決定的な違いです。

——ここからは、「調光対応」と表示された製品を正しく使った場合でも残る危険です。

1. 調光器の「最小負荷」を下回る機器故障

調光器の仕様書には、たいてい「最小負荷 40W以上」のような記載があります。これを下回ると正常に動作しない、という下限です。

位相制御調光器の中身はトライアックという半導体スイッチで、これは一度点弧したあと、ある程度の電流が流れ続けていないと勝手にOFFに戻ってしまう性質があります。白熱電球なら電流が滑らかに流れ続けるので保持できますが、LEDは消費電力が約1/10なうえ、電流の流れ方が途切れがちです。

1,500Wのシャンデリアも、LED化すれば150W前後。回路を分ければ数十Wになります。最小負荷はいとも簡単に割れます。これが「絞ると不安定」「ある明るさで急に消える」の隠れた原因になっていることがあります。

2. 突入電流でトライアックが壊れ、消せなくなる重大

LED電球の入り口には平滑コンデンサが入っています。空のコンデンサは、電気的には一瞬ショートしているのと同じです。

位相制御は、正弦波の途中からいきなり電圧を叩き込む方式です。そこへコンデンサがつながっていると、瞬間的に定格の数十倍の電流が流れます(突入電流)。1灯なら耐えても、シャンデリアで何十灯が一斉にとなれば合算されます。

トライアックは、壊れるとき「ショート(短絡)側」で壊れることが多いのです。 つまり故障すると「点かなくなる」のではなく、全光のまま固定されて、調光つまみもスイッチも効かなくなります。 ここが最も注意すべき点です。照明が消せない状態は、そのまま器具の過熱につながります。 調光器本体が発煙・焦げることもあります。

3. 片側の半波だけになると「直流分」が流れる火災

トライアックは交流のプラス側とマイナス側を交互に点弧して、バランスを取っています。素子が劣化したり、最小負荷割れが片側で先に起きたりすると、片方の半波でしか点弧しない状態になることがあります。

こうなると、負荷に流れる電流に直流成分が乗ります。純粋な抵抗負荷ならまだしも、系統に調光トランスや絶縁トランスが入っていると危険です。直流分はトランスの鉄心を一方向に磁化させ(偏磁)、励磁電流が跳ね上がって異常発熱・焼損に至ります。

「最近トランスが妙に熱い」「唸りが大きくなった」は見逃さないでください。 LED化してから、あるいは調光器を絞って使うようになってから変化したのなら、直流分を疑う場面です。 これは火災につながる経路です。

4. 密閉器具・断熱施工での異常発熱寿命低下

LED電球の弱点は熱、特に中の電解コンデンサです。位相制御で切り刻まれた歪んだ波形は、LED内部の電源回路にとって想定外の入力で、そのぶん余計に発熱します。

これが密閉型のダウンライト(SB形・SGI形などの断熱施工対応器具)で起きると、熱の逃げ場がありません。カタログ寿命4万時間の製品が、数千時間で暗くなったり点かなくなったりします。樹脂部が変形・変色していたら、かなり進んだ状態です。

5. スイッチを切ったのに薄く光る・明滅する感電注意

調光器の内部にはノイズ対策の回路(スナバ)が入っており、OFFのときもごくわずかな電流が流れています。ホタルスイッチ(暗いところで緑に光るスイッチ)も同じです。

白熱電球ならこの程度の電流では光りませんが、LEDはわずかな電流で光ります。コンデンサに少しずつ充電されては放電し、数秒おきにピカッと光る、という現象も起きます。

見た目の問題に思えますが、「切ったつもりの回路に電圧が残っている」ということでもあります。器具の交換作業では必ずブレーカーを落としてください。

6. ノイズが他の設備に回り込む

位相制御は電圧を急峻に立ち上げるため、電源ラインにノイズを撒きます。LED電球側のスイッチング電源と干渉して、音響設備にハムノイズが乗る、無線機器やセンサーが誤動作する、といった二次被害が出ることがあります。宴会場・店舗では実害になります。

この危険を避けるには

やること理由優先度
調光回路に非調光形を使わない 大前提です。メーカーの禁止事項であり、発煙・焦げに至る経路です。「調光器対応」の表示があるものを選んでください。表示が無ければ非調光形です。 絶対
調光器の最小負荷を仕様書で確認する LED化後の総ワット数が下回っていないか。下回っていれば、ちらつきは製品のせいではありません。 まず最初に
調光器も一緒に交換する LED負荷に対応した調光器は最小負荷が小さく、突入電流への保護も入っています。器具だけLEDに替えて調光器を残すのが、いちばん危ない組み合わせです。 高い
白熱電球とLEDを同じ回路に混ぜない 混在すると負荷の性質が読めなくなり、症状の切り分けも不可能になります。 高い
系統にトランスが入っていないか確認する 直流分による焼損の経路になります。入っているなら位相制御での深絞りは避けてください。 高い
ダミー負荷(疑似負荷抵抗)で最小負荷を稼ぐ 成立はしますが、その抵抗が発熱します。せっかくLED化した意味も薄れます。応急処置と考えてください。 最後の手段
方式そのものを替える(次章) ここまでの危険は、すべて「白熱電球用の調光器でLEDを切り刻んでいる」ことから来ています。方式を替えれば根本から消えます。 本命
ちらつきを「我慢すれば使える不具合」と考えないでください。 絞った状態でちらついているとき、調光器とLED電球の両方に、設計されていないストレスがかかり続けています。 症状が出ている回路は、負荷構成の見直しが必要な状態です。

直し方 — 現実的な選択肢

  1. 単灯のダウンライトなど … 各メーカーが大きな平滑回路を組み込んだLED器具を作っており、既設の調光器のままでも収まるケースが増えています。まずは器具の選定で対応できないか検討します。
  2. シャンデリアなど多灯の器具 … 小さな電球が一つの器具に何十灯も付くため難易度が上がります。ここで位相制御に固執すると解決しません。方式の変更を勧めます。
  3. DC24V + 高周波PWM に替える … 器具まではAC24Vで送り、器具内でブリッジ整流してDC24V化します(無極性になるので配線の極性を気にせず施工できます)。点灯はPWMで、ちらつきが見えない2〜4kHzを使い、最小1/4096の細さから立ち上げます。DMXの256段階を16分割して4096段階に割り付ける、この調光カーブの作り込みが要点です。
    現在は出力の分解能を 15 ビット(32768 段階)まで上げています。理由は消え際で、12 ビット(4096 段階)だと最後の一段から 0 へ落ちるときにパッと消えてしまうため。15 ビットならその最後の一段をさらに 8 分割でき、最後まで滑らかに消し切れます。
既設配線はそのまま使えることがほとんどです。 従来の100Vシャンデリアは1,500W級(最大2kW=20A)で、ホテルなどでは5.5sqクラスの太い電線が引かれています。 LED化で電力は約1/10、電圧は100V→24Vで1/4になるため、電流はおよそ4/10。20A流れていたところが上限8A程度で、電流容量は問題になりません。 100m引いて電圧が1割落ちても、最大光束が10〜20%違う程度は人間にはほとんど分かりません。

むしろ問題になるのは逆で、太すぎる電線のインピーダンスと反射です。1/4096のごく細いパルスが反射でふらつくため、現場によっては1/2000、1/1000が限界になります。そのため器具側に最小デューティやカーブの現場調整(DIPスイッチ)を持たせ、カーブを何種類も用意しています。

工事業者・設計の方へ — 現場で確認する順番

  1. 既設の調光方式を確認する。2線式(位相制御)かどうかで、取り得る解が変わります。
  2. 同じ調光回路に何が混ざっているかを確認する。シャンデリア・間接照明(コーブ)・ダウンライト・ブラケットが同一枠に入っていることがよくあり、LED化するとバラバラに消えます。
  3. 電源系統を確認する。動力と同居しているか、キュービクルの段階で照明系統が分けられているか。ここが乱れていると、器具をいくら選んでも安定しません。
  4. 器具までの配線を確認する。既設流用の可否、線種と長さ。太い線ほど反射の影響が出るため、最小デューティの限界に効きます。
  5. どこまで絞りたいかを施主と決める。常夜灯レベル(0.1%程度)が要るのか、演出上どこまで落とすのか。ここが決まらないと方式は選べません。

よくある質問

調光スイッチの照明に、普通のLED電球を付けてしまいました。危険ですか?
パッケージに「調光器対応」の記載が無ければ非調光形で、メーカーが禁止している使い方です。唸り音・ちらつき・異臭・口金の変色のいずれかが出ていれば、ただちに使用を中止してください。発煙や焦げに至る例があります。症状が無くても、調光器対応品への交換をおすすめします。
調光つまみを最大にしておけば、非調光のLED電球でも使えますか?
使えません。位相制御は全開でも波形の頭が欠けるため、切り刻まれた入力であることに変わりありません。また、誰かがつまみに触れた瞬間に危険な領域に入ります。メーカーの禁止事項は「調光器回路につながないこと」であって、「絞らなければよい」ではありません。
「調光対応」と書いてあるLED電球なら大丈夫ですか?
調光が「できる」ことと、現場の乱れた電源で深く絞っても安定することは別です。試験室のきれいな電源での確認は現場の証明になりません。また調光器側の最小負荷を下回ると、対応品でも不安定になります。
既設の配線は引き直しになりますか?
多くの場合そのまま使えます。100V・1,500W級で引かれた電線なら、24V化しても電流はおよそ4/10に下がるため容量は足ります。
どこまで暗くできますか?
常夜灯レベル(出力0.1%程度)を狙います。ただし配線状態によっては1/2000や1/1000が限界のこともあり、その場合は器具側の設定で現場に合わせ込みます。
なぜ器具ごとにバラバラに消えるのですか?
LEDは製品ごとに調光カーブが違うためです。同じ回路に入っているものは、器具側でカーブを合わせるしかありません。
ダウンライトでも同じ問題が起きますか?
単灯の器具はメーカー側の作り込みで収まる例が増えました。難しいのは、小さな電球が何十灯も付くシャンデリアです。
現場の症状が上のどれに当てはまるか分からない場合も、そのままご相談ください。
既設の調光方式・器具の混在・電源系統をうかがえば、方式を替えるべきかどうかの判断ができます。
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