照明制御45年 | 建物設備側の制御に、演出側の制御を後から足す — 何ができて、どこで詰まるか
Helvar の DALI システムが入った建物に、DMX512 の演出制御をつなぐことはできます。経路は主に 3 つ(DMX IN/OUT を持つルーター、DMX 入力を持つ個別機器、LAN 経由の HelvarNet)。既存の Helvar 設備を作り替える必要はありません。
ただし DALI 側には避けられない壁があります。調光値 254 段階(対数)、伝送 1200bps、1 ループあたり毎秒 10〜40 アクション。DALI をそのまま器具に渡すだけでは、フェードは階段になります。
だから境界にインターフェースを入れます。建物設備は Helvar/DALI のまま、深い調光が要るシャンデリアや演出器具は DC24V + PWM(従来 4096 段階=12 ビット、現在は 32768 段階=15 ビットが必要)。両者を変換でつなぐ。これが現場でいちばん収まる形です。
1921 年創業、フィンランド・ヘルシンキの照明制御メーカーです。LED ドライバやバラストから、 センサー・調光ユニット・制御システムまでを一貫して手がけています。 1999 年に欧州の照明メーカー各社がオープン規格として発表した DALI (Digital Addressable Lighting Interface)の策定に関わったメーカーの一角で、 日本では 2000 年から株式会社レイオスが正規代理店を務めています。
日本の現場で Helvar に出会うのは、たいていこういう場面です — ホテル・商業施設・オフィスなどの建物設備側の照明が DALI で組まれていて、 そこに演出照明やシャンデリアを後から足したい。 設備の設計は建築側、演出は別発注、という分かれ方をしているため、 この「境界」が誰の担当でもないまま残ることがよくあります。
Helvar の Imagine 系は、イーサネット(TCP/IP)をバックボーンにして、 配下の DALI サブネット・S-DIM・DMX を束ねる構成です。ルーターをスイッチでつないで規模を伸ばせます。 つまり DMX で入れた信号を、LAN を通じて別のルーター配下の DALI 器具まで届けられるのが要点です。
| 機種 | DALI サブネット | DMX | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 905 | 1 | なし | 小規模・単一ネットワーク |
| 910 | 2 | なし | DIGIDIM/DALI-2 の標準機 |
| 920 | 2 | IN/OUT 512 アドレス | DMX 連携の本命。S-DIM も持つ |
| 945 | 2(DALI-2 マルチマスタ) | なし | DALI-2 認証世代 |
| 950 | 4(DALI-2 マルチマスタ) | なし | 最新世代・大規模向け |
| 経路 | やり方 | 向く用途 / 注意点 |
|---|---|---|
| ① 920 ルーターの DMX IN | 調光卓や演出コントローラの DMX512 を、920 の DMX 入力へ直結。512 アドレスを Helvar 側のグループ・シーンに割り付ける。 | いちばん素直。DMX を LAN バックボーンに載せて他ルーター配下まで届く。DMX OUT で Helvar 側から外へ出すこともできる。 |
| ② DMX 入力を持つ個別機器(474 など) | 474 は DALI/Helvar SDIM/DMX512-A を受け、0-10V・1-10V・DALI ブロードキャスト・DSI・PWM の制御信号を 4ch 出力。各 ch に高突入対応リレー(16A)付き。 | ルーターを立てずに部分的に混ぜたい場合。DMX のリフレッシュは最大 33Hz。出力の PWM は「制御信号」であって、器具を焚く電力段は別。 |
| ③ HelvarNet(LAN 経由のコマンド) | ルーターに TCP/UDP でテキストコマンドを送り、グループ・シーン・レベルを指示。BMS や AV 機器、PC からの制御で使われる。 | PC やタッチパネル、上位システムから「シーンを呼ぶ」用途に向く。リアルタイムに毎フレーム値を投げる使い方には向かない。 |
ここが今回いちばん伝えたい部分です。DMX と DALI は「デジタル調光」という言葉では同じでも、 設計思想も速度も別物です。DALI は建物の照明を安定して管理するための規格で、 舞台のように毎秒何十回も値を動かす前提では作られていません。
レベルを動かす速さで言えば、DMX は DALI の 500 倍以上速いと説明されています(ETC の解説)。 この差は、現場では次のような形で目に見えます。
DMX なら滑らかな 2 秒フェードが、DALI に変換すると「2〜3 段の階段」になる、という報告があります。器具内蔵のフェード時間である程度は均せますが、狙った速さで落とすことはできません。
一斉に点けたつもりが、器具ごとに点き始めがずれ、明るさの差が波のように客席から見えます。コマンドが1台ずつ順番にしか流れないためです。
254 段階の対数カーブでは、ゼロ付近まできれいに落とし切れません。多くの器具は 5〜20% あたりでパチンと切れます。
変換する ch 数を 64 から 32 に減らせば更新は倍速に、全灯を1アドレスに束ねれば最速に。速度と個別制御は交換条件です。
当方が LED シャンデリアでやっている調光は、DMX の 256 段階を細分化して、ごく細いパルスから立ち上げるものです。 以前は 4096 段階(12 ビット)で成立していましたが、現在は 32768 段階(15 ビット)が必要になっています。 DALI の 254 段階とは、桁が 2 つ違います。 この差を埋めるのが、Helvar 側と器具の間に置く変換インターフェースです。
要点は「粗さを受け側の時間で埋める」ことです。DALI から来るのは飛び飛びの目標値ですが、 そこにフェード時間の指示が付いています。受け側で目標値のあいだを時間で補間してやれば、 器具の明るさそのものは 32768 段階で連続的に動かせます。 ゆっくりしたフェードなら、これで階段は消えます。
もうひとつ、上流の電源品質の問題があります。せっかく細かい PWM を作っても、 元の電源が乱れていれば、絞った領域では相対的な変動が巨大になってチラつきます。 位相制御を前提とした調光器から PWM インターフェースを叩く構成が安定しないのは、これが理由です。 詳しくは LEDシャンデリアの調光はなぜ難しいのか と 電源系統と安全設計 に書いています。
| 対象 | 任せる方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般照明・オフィス・廊下・非常照明 | Helvar / DALI のまま | 器具ごとのアドレス管理、状態監視、BMS 連携、法規対応。DALI の得意分野をそのまま使う |
| シャンデリア・演出照明・深い調光が要る器具 | DC24V + PWM(32768段階/15ビット) | 消え際の滑らかさと常夜灯レベルまでの絞り込みは、DALI 単体では出ない |
| 舞台・ライブ・音楽同期 | DMX512 / Art-Net | 毎フレーム値が動く用途。DALI に載せてはいけない |
| 時間帯・季節での自動運転 | どちらでも可(上位で持つ) | カレンダー・タイマー側から両系統へ指示を配る構成にする |
| 壁スイッチ・センサー・外部接点 | 入口はどちらでも可 | 接点 → DALI、接点 → DMX いずれも実績あり |
現場でやった具体的な構成と、うまくいかなかった事例を、公開できる範囲で足していく予定です。
※ 製品仕様はメーカーの改訂により変わります。設計前に必ず最新のデータシートをご確認ください(本ページの記載は 2026年7月26日 時点の公開情報に基づきます)。